役に立つ与信管理実務レポート
FILE NO.003 顧客の与信情報を一元管理 容易に導入できる与信管理システム

会社概要

C 株式会社
年商:約8,000百万円
業種:会員制事務用品販売
上場:2008年上場を目指す
取引先数:約300社
販売先業種:一般法人
前年度年間貸倒金額:約2百万円

課題・問題点

C社は設立して、未だ10年に満たない新興企業。売上も堅調に伸び、取引先の新規開拓にも余念がなく2008年度中の上場を目指している。
しかしながら、営業中心で会社を運営してきたこともあり管理面のインフラが整備できていない。セキュリティや内部統制なども意識したシステムを構築する必要が出てきた。

関連用語説明

『与信判断』

取引先の格付、倒産確率、適性与信金額を取得できるサービス。
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『企業情報』

当社提携先の興信所が保有する企業情報が取得できるサービス。
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『財務情報』

当社の提携先の興信所が保有する財務諸表が取得できるサービス。
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『調書』

当社提携先の興信所が保有する調書が取得できるサービス。
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『信用変動』

取引先の信用度(取引の際に発生するリスク)の変動。

『CSV』

Comma Separated Valuesの略。別名カンマ区切りと呼ばれ、主に表計算ソフトやデータベースソフトでデータを保存するときに使う形式のこと。

 ここでは、与信管理システムを構築するにあたり、ASPを使って社内のインフラを整備した事例を紹介する。

 まず本題に入る前に、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)の説明とメリットを纏めておく。
 ASPとは、インターネット等のネットワーク環境を通じ、自社でホストを所有せずに、アプリケーションソフトウェアや付随するサービスを利用することができるアウトソーシング手法の一形態である。加えて、ASP導入の代表的なメリットは以下3つ。

  1. 導入が容易
    インターネット環境とWebブラウザさえあれば、必要な時に、どのような場所からでも利用可能。また、個別のパソコンに新たなソフトウェアを導入する必要がなく、ユーザーは常に最新のサービスを受けることができる。
  2. セキュリティが強固
    サーバの管理はセキュリティの強固なインターネット・データ・センターで管理されており、データの機密面でも運用面の障害面でも最大限の安全性が保障される。
  3. 導入費用が安価
    ソフトウェアやアプリケーションを自社で購入・開発するのと比較して、低額の料金でサービスを享受できる。

 上記C社は、取引先管理システムの導入にあたって、当社の提供するASPサービス『取引先与信管理サービス』を採用した。同サービスのイメージ図は以下の通り。

 簡単にサービス概要を説明する。赤い破線に囲まれた4つ(与信判断企業情報財務諸表調書)は、当社独自の情報、もしくは当社経由で入手可能な興信所より入手できる情報(自社入力の財務諸表は除く)である。上記の各情報は、取引先ファイルというデータベースに格納することが可能で、一度取引先ファイルに格納した情報については、C社のIDの取得者であれば、何度でも閲覧及び再取得等が可能となる。
 青い破線で囲まれたものは、C社にて登録した情報である。担当者、決裁条件、取引先の往訪記録などが書き込み可能。また、契約書類、見積等もPDF、EXCEL等のファイルとして格納することできる。
 黄色い破線内の与信フォローアップは、取引先の信用変動のモニタリングサービス。C社がファイルを作成した取引先の中で、特に気になる先について登録しておくことで、変動があった場合、E-mailにて通知される。

1.営業スタイルとの親和性

利用者IDと権限

当社ASPでは、利用者IDは、無料で、ほぼ無制限に(1社あたり20万IDまで)発行が可能。
また、IDに対し10パターンの権限設定が可能(Ex:閲覧のみID)。
加えて、セキュリティを鑑み、情報入手者のIDも即座に確認することが可能。

 C社は、営業担当を約50名を抱えており、その大半が出社後すぐに外回りに出かけ、夕方遅くに戻ってくるSOHOにも近い営業スタイルであった。出先からでも、新規開拓先や既存取引先の情報が即座に入手できるように、営業担当全員に同サービスの利用者IDに付与した。

 これにより、新規アプローチを開始する際には、

  1. 初めに企業情報を取得し、ファイルに登録する。
  2. 契約が見込めるようになった段階で格付の取得する。

といったフローを作成し、一方、既存取引先には、

  1. 契約書、見積書をPDF化して格納(原本は耐火金庫に)し随時閲覧可能な状態とする。
  2. 取引先ファイルに部署、担当者、先方窓口、決裁条件等の基本情報を入力し共有。
  3. 往訪時には往訪記録を入力。
  4. 気になる先については与信フォローアップを登録
  5. 決算書が入手できた先についてはファイルに入力する(財務データ入力)。

といった管理を行った。

 このように、リアルタイムで情報が取得できることにより、営業の効率化・スピードアップが可能となった。加えて、他の営業担当と情報を共有化することにより、興信所情報の重複取得がなくなるといった副次的な効果もあった。

2.管理部門における取引先管理

 取引先ファイルに登録してある企業については、EXCEL・CSVファイルにて一括でダウンロードすることもできる。
 C社は、毎月、ダウンロードしたデータをもとに自社の債権残高データと取引先ファイルに登録した限度額の突き合せを行い、限度額を超過した先や枠残の少ない取引先を部署毎にまとめ、営業部に対し情報発信していくとともに、全社的な取引先の債権額や、新規先へのアプローチ状況を記録していった。
 また、管理が不要になった先については、定期的に取引先ファイルの削除を行い、常時必要な先のデータだけをASP上に残すことで、スリープ先の確認とコストダウンに努めた。

3.導入コストについて

利用サービス

件数

企業情報

180

与信判断

150

取引先ファイル※

与信フォローアップ※

信用調書

4

※ファイル等については月単位の件数精算であり、本件、登録削除を繰り返しているため内訳は開示せず。

 最後に、コストについて検証してみたい。当社サービスの料金プランは、ボリュームディスカウントを採用しており、利用件数が多い場合には、より上位のプランで入会することでサービスの単価が安くなる。携帯電話の加入プランをイメージしていただけるとわかりやすいかもしれない。

年間トータルコスト= 基本料金 + 個別サービス単価×件数

 C社の1年間に取得した情報件数及び作成したファイルは右の通り。

 冒頭のメリットにも挙げたが、自社でシステム構築した場合とは、以下の点も考慮して採算比較を行うべきである。

  1. 自社で同様のシステムを構築した場合の直接コスト
  2. そのシステムのセキュリティに掛かる直接のコストと運用コスト(人件費)
  3. 各拠点に専用線等を設置する手間と今後の拡張性
  4. 各端末のセットアップ等の手間

 また、なかなか論じられることは少ないが『ASPの利用料金については利用年度に税務・会計上、全額損金処理が可能』といった点も、自社でシステムをP/L上に固定資産として保有し、償却する場合と比較した場合メリットとなる企業もあるだろう。

ポイントまとめ

  1. ASPのメリットは(1)導入しやすさ、(2)セキュリティ、(3)コストである。
  2. 営業部門間、営業部門と管理部門の情報共有がシステム構築の鍵になる。
  3. 内部統制など社内の情報管理の面から、ASP利用者のサービス利用権限の設定は必須。

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