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【第六回目】SMARTを使いこなそう!適正与信金額を徹底解説
こんにちは。三井物産クレジットコンサルティング(MCC)編集部です。
今回は、SMARTの「適正与信金額」についてご紹介します。
「MCC格付はわかったけど、結局いくらまで取引していいの?」「感覚的な判断ではなく、もっと客観的な基準がほしい」といった疑問にお答えするのが、この「適正与信金額」です。
この適正与信金額の仕組みや、それをあなたのビジネスでどう役立てるのかを、活用事例を交えながら分かりやすくご紹介します。
この記事を読めば、あなたの与信管理がより戦略的になるはずです!
1. 適正与信金額とは?取引リスクを数値化するSMARTの独自指標
適正与信金額とは、「この取引先に、どこまでなら安心して与信を出していいか?」という“安全の上限金額”を、貴社の財務状況に合わせて算出したSMART独自の指標です。
この金額は、取引先が万が一倒産したとしても、その損失を貴社の自己資本で吸収できるように設計されています。つまり、リスクを抑えつつ、安心して取引を進めるための具体的な目安なのです。
2.適正与信金額の設計プロセス
適正与信金額は、主に2つの要素から設計されています。
① 取引先の返済能力を見る: 取引先が倒産した際に、どれくらいの金額が返ってくる可能性があるかを評価します。取引先が保有する資産(建物や機械など の有形固定資産や売上債権・在庫などの流動資産等)を評価し、「倒産してもこのくらいは回収できそう」という目安を立てます。
② 貴社の体力を把握する: もし取引先からお金が返ってこなかった場合、貴社がどこまで損失に耐えられるか、その体力を見極めることが必要です。
この基準となるのが返済義務のない「自己資本」です。自己資本には、会社の安全性を確保し、将来への投資に備える役割があります。
その為、適正与信金額では、自己資本全てをリスクに使うのではなく、会社に無理のない範囲で損失をカバーできる上限額を算出します。
もしリスクが顕在して、自己資本を超える損失が発生すると債務超過となり、倒産のリスクが極めて高くなることから、上限額でカバーできる金額を設定することが重要となります。
まとめると、
自己資本という会社の“安全余力”をもとに、
「このくらいの損失までは許容できる」というラインを取引先ごとに設定して、
そこから、無理のない与信の上限額を決めていく
という考え方です。
3.適正与信金額の設定方法
適正与信金額は、貴社のビジネス特性やリスク許容度を深く理解した上で、1社1社個別に作成します。また、一方的なご提案ではなく、貴社と弊社の担当が一緒に話し合いながら、最適な金額を導き出します。貴社側で設定することはできませんので、ご希望の際はお気軽に担当営業までご相談くださいませ 。
4. 適正与信金額の確認方法
適正与信金額は、MCC格付と同時に表示されます。取得手順はとても簡単です。
1.SMARTの左側メニューから「企業検索」を選び、調べたい企業のTSRコードや企業名を入力します。
2.該当企業にチェックを入れ、「与信判断」ボタンをクリックします。
3.「SMARTデータ利用(課金対象)」ボタンを押すと、MCC格付と並んで「適正与信金額」が表示されます。

5.適正与信金額のビジネス活用3選!
適正与信金額とは何か、ご理解いただけたでしょうか?
次は、取得した金額をあなたのビジネスでどのように活用できるのか、
具体的なシーンを3つご紹介します。
活用事例1:新規取引の交渉材料に!リスクとリターンのバランス調整
こんなシーンで: 新規取引を開始する際、自社にとって最適な取引額を設定したい時。
活用法: SMARTで表示された適正与信金額を、新規契約における取引額の交渉材料として活用します。たとえば、先方が希望する取引額が適正与信金額を大幅に上回っている場合、そのリスクを共有した上で取引条件の調整(支払条件の変更、前払いなど)を提案することができます。これにより、無理な取引を避け、リスクとリターンのバランスが取れた関係を構築できます。
得られるメリット: 無理な与信取引の回避、リスクに応じた取引条件の設定、契約交渉のスムーズ化。
活用事例2:稟議の説得力向上!データに基づいた承認プロセスへ
こんなシーンで: 新規の大型契約や重要な取引の開始にあたり、上層部への稟議書の説得力を高めたい時。
活用法: 稟議資料にSMARTで算出した適正与信金額を記載し、具体的な数値的根拠を提示します。たとえば、「今回の契約金額は適正与信金額である○○万円の範囲内であるため、リスクは十分に管理可能と判断します」といった記述を加えることで、担当者の主観ではなく、客観的なデータに基づいた提案として、意思決定者に安心感を与えられます。これにより、何度も修正を求められたり、承認に時間がかかったりするのを防ぎます。
得られるメリット: 稟議プロセスの効率化、社内コミュニケーションの円滑化、担当者の信頼性向上。
活用事例3:全社リスクを「見える化」!戦略的ポートフォリオ分析で経営をコントロール
こんなシーンで: 経営層やリスク管理部門が、全取引先に対する与信の「偏り」と「総量」を把握し、企業全体で保有するリスクを定期的にチェックし、管理したい時。
活用法:全取引先に対しSMARTで適正与信金額を算出し、それと実際の取引額を比較したポートフォリオ分析を実施します。
まず、現在の取引額が適正与信金額を上回っている取引先を特定し、リストアップします(リスク超過先の明確化)。
次に、それらの超過先がMCC格付のどの層(低リスク、中リスク、高リスク)に多く存在しているかをグラフで可視化します(リスク集中度の測定)。この分析により、「格付の低い要注意先」にリスクが集中していないかなど、見過ごされていた全社的なリスクの偏りを把握できます。
この客観的な分析結果を基に、経営層はどのリスク層から優先的に取引条件の見直しや回収強化を行うべきか、全体最適の視点から迅速に判断できます。
得られるメリット: リスクの全体把握と偏りの特定、戦略的なリソース配分、データによる迅速な判断。
まとめ:適正与信金額で、あなたのビジネス判断をより強く
SMARTの適正与信金額は、具体的な取引判断をサポートし、あなたのビジネスを力強く後押しするツールです。この客観的な情報が、リスクを適切に管理しながら、成長を追求するあなたの経営を支えます。
ご不明な点やご相談がございましたら、専門スタッフが丁寧にご案内いたします。いつでもお気軽にご連絡ください。
次回も与信管理に役立つ情報を配信します。どうぞお楽しみに!