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与信管理の知恵袋 Vol.39 緊急(倒産)対応策について(後編)

倒産時の緊急対応

こんにちは。MCC与信管理ラボ編集部です。

前編では、緊急時の心構えと初動動作についてご紹介しました。

前編の記事はこちら

取引先の倒産が発覚した直後は、相手先の社長との面談や工場、倉庫を実際に見ることで、「自社の商品や他社の商品が山積みにされている」、「売掛金が回収されずに残っている」、「社有資産・社長個人資産に無担保資産(担保設定のされていない資産)がある」など、現場で得られる情報はたくさんあります。

後編では、現場で得た情報から具体的にどのような保全策が取れるのか、自社で納入した商品が相手先に残っていた場合をケースに分けてご紹介します。

本題に入る前に、以下の2つの注意点を念頭におき、理解を深めていただきたいと思います。

相手先に与えた「期限の利益」

「期限の利益」とは期限(支払期日)の到来までは、債務を履行しなくとも良いという債務者側の権利です。

この期限が到来しているかどうかは、緊急時の保全策を講じる場合にはとても重要な問題となります。

したがって、緊急時の対応に備えて、日頃から「期限の利益の喪失」「約定解除権」は契約書等で確保しておくことが望ましいです。

「否認」の問題

破産の法的手続がとられた場合、管財人等から破産直前に緊急的に行った保全措置については、否認(倒産直前の抜駆け行為は「債権者平等の原則」に反し許されないこと)とされ、保全行為が否定される場合があります。

したがって、緊急的な保全措置においても事前に弁護士等の専門家と協議の上で、慎重に対応する必要があります。

契約解除(合意解除)による引揚げ

納入商品の支払期限が到来しているか否かで対応は分かれます。

支払期限が到来している場合は、契約の解除は相手方の合意を取らなくても可能です。ただし、商品の引揚げには合意が必要です。

一方、支払期限が到来していない場合は、契約の解除希望と商品の引揚げに、相手方の合意を得る必要があります。

現場に責任者が不在で、契約解除の合意が得られない場合は、商品だけでも預からせてもらうための交渉をしてみましょう。その際は、忘れずに「預り書」を相手先に残すようにします。

引揚げることができない場合の措置

相手先が商品を引揚げることに難色を示す場合は、法的手続(仮差押)をとって、商品が他に持っていかれないように保全策を図る必要があります。

その場合は、早急に弁護士などの専門家と協議して準備をしましょう。

実務的には難しいですが、さらに「動産売買先取特権(自社の商品により優先的に弁済を受ける権利)」を法的に行使することも可能です。

また、法定解除という方法もありますが、支払遅延が大前提となりますので、支払期日が先の場合は使えません。

他社商品は引揚げの可否

他社の商品の引揚げは不可能ではありませんが、その商品を納入した他社がまだ代金を受領していない場合には後日問題になります。

法的手続に入れば、前述の否認がなされる可能性も非常に高いので、弁護士等の専門家と相談の上、慎重に検討して対応する必要があります。

他社商品を引揚げる場合は、「契約解除」「先取特権」は使えませんので、「買上(相殺)」「代物弁済」「譲渡担保」のいずれかの形態になります。

当社が納入した商品を転売された場合

「動産売買先取特権」の「物上代位」というやり方があります。

前述した「動産売買先取特権」は納入した商品が相手方に残っていれば、その商品に対して権利を行使(競売等で優先弁済を受けること)ができます。

その商品がすでに第三者に転売されていると商品については追求できません。

しかし、転売先がその代金を相手方に払っていなければチャンスがあります。

その未払の代金債権について差押をして動産売買先取特権の物上代位として支払わせることが可能です。

つまり、もともとの商品については、我々に先取特権があり、その商品が代金債権に形を変えただけなので、その代金債権に対しても先取特権が及ぶというのが物上代位の考え方です。

したがって、あくまで転売が対象で、少しでも加工が加わったりして商品自体の形・性質が変わったりすると対象となりません。

また、差押等法的手続をしなければなりませんが、その手続(厳格な権利の立証等をしなければなりません)は容易ではなく、実際上は第三者債務者(転売先)の協力もないと難しいのが現実です。

また、第三債務者(転売先)から相手先に支払がなされたり、その代金債権自体が譲渡されたりしたらおしまいですのでスピードも要求されます。

その他資産からの保全

会社資産と個人資産で対応が分かれます。

個人資産の場合は、前述の否認の対象とはなりませんが、会社資産の場合は担保契約が有無で大きな違いがあります。

「担保契約がない」場合は、倒産直前の抜け駆け行為として否認の対象となる可能性が大きいです。

「担保契約があった」場合でも、契約内容や締結の時期が問題となりますので、弁護士等の専門家と相談して、慎重に対応してください。

その他の方法

その他の方法としては、新たな「買上げ(買上げ後に相殺)」、「代物弁済(他のもので返してもらう)」、「譲渡担保」という方法も考えられます。

「買上げ」、「代物弁済」については価格設定の問題があるため、実際には契約解除が一番有効な交渉といえます。

おわりに

取引先が倒産した際に、自社商品が相手方にある場合、その取り扱われ方の内容で、保全策は大きく異なります。専門家への相談とともに、やはりこの際にも初期動作が非常に大切になっていきます。
緊急事態時には、今回紹介した内容をいま一度ご確認いただき、損害を最小限に抑えられることを願います。

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