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与信管理の知恵袋 Vol.17 与信管理にかける予算の考え方

与信管理の予算を検討する男性

こんにちは。MCC与信管理ラボです。

事業会社で与信管理を行うときに、「与信管理にどの程度の予算を割くか?」について議論となることがあります。

具体的には、信用情報取得や外部の与信管理ツールの利用、取引信用保険や債権保証サービスをいくらくらい利用するかということです。

今回は、与信管理の予算を検討する考え方の判断基準について解説を行います。

与信管理の予算 判断基準①:利益

会社全体、事業部署、商材などで区切った利益率や利益額を予算の基準とする考え方があります。

定量的に判断ができるため、周囲からの理解が得やすいと言えます。

たとえば、現在ある事業部の利益率が売上高に対し5%だった場合、新たに与信管理を行うための費用を6%追加で支出するとしたらどうでしょうか。

得られる利益をこえた与信管理費用を支出することは、過大なコストであると言えます。

そこで、会社や事業部、または特定の商材のビジネスにおいて目標とする利益水準を定め、売上高のうち何%を与信管理費用として使用できるかを考えます。

もしくは、利益率ではなく目標とする利益額から与信管理に割り当てられる費用を算出する方法も可能です。

ただし、利益の捻出を優先するあまり与信管理の費用をむやみに縮小することは得策とは言えませんので注意して下さい。

なお、この考え方は、稼いだ利益の枠内で与信管理費用の適正水準を見極める考え方ですので、理解を得やすいものです。

その一方で、欠点もあります。

それは、新たな商材、中長期的な展開を見据えた事業部などの様に、すぐには利益を出せない場合です。

現時点で利益が出ていないからといって、与信管理の予算を縮小するとその為にかえって貸倒債権が発生してしまい、もっと利益水準を押し下げてしまう。
そして、さらに与信管理の予算を縮小するという悪循環に陥ってしまう危険性があります。

対象としているビジネスの成長ステージによっては、慎重に予算を活用することが求められます。

与信管理の予算 判断基準②:貸倒れリスク

これは、自社が抱えている貸倒れリスクを基準として、与信管理の予算を考えるものです。

具体的には、まず現時点で自社の取引先企業はどの程度の倒産リスクがあり、各取引先企業に対してどれくらいの売上債権(売掛金・受取手形等)を保有しているかを整理します。

その上で、将来貸倒債権が発生するリスクを数値化して算出し、それらをコントロールするための与信管理費用を検討することになります。

取引先企業ごとの売上債権(売掛金・受取手形等)の保有額の調査は比較的容易に実施できますが、取引先の倒産リスクを統一的な指標で管理するのはやや困難です。

加えて、貸倒れリスクの算出は、統計的に信頼性のあるデータベースと指標が必要となるため更に難易度があがるようになります。

一方、将来の貸倒れリスクを定量的に算出できると、現状の貸倒れリスクの全体像を可視化できることになり、合理的な与信管理体制構築の基礎となります。

与信管理の予算 判断基準③:企業文化

与信管理を行うに当たって貸倒れを防ぐという目的は、どの企業も共通しています。

しかし、与信管理に対する基本的な考え方は、企業によって異なっているように感じます。

ある企業では、徹底して顧客の信用情報を調査し危険だと判断すれば商流変更や撤退を果断に行うことが求められます。

そして、取引信用保険や債権保証サービスのようなリスクヘッジ商品は一切認められません。

与信管理は営業担当者が取引先と強固な関係を築き、倒産兆候を見逃さなければ問題ないとの考え方です。

一方で、リスクヘッジ商品を全面的に採用し営業担当者に負荷をかけないことを中心とした考え方を採用する企業もあります。

これはどちらが良い悪いということではなく、企業文化と言えるような与信管理に対する考え方になります。

実際には、上記のように両極端になる企業は珍しく、いくつかの考え方のバランスをとって運用する企業が多い印象です。

それぞれの企業毎に与信管理への基本的な考え方が根底にありますので、自社の考え方に則りながらもその中で費用効果の高い予算配分を考えてみてください。

与信管理の予算 判断基準④:取引先企業の規模

業界やビジネスモデル、商材等により、取引先企業の規模感は変わってきます。

大手・上場企業のみに取引を限定しているケース、中小・零細企業や個人事業主が取引先のほとんどであるケース、大手から中小まで幅広く取引を行っているケースなどです。

取引先の企業規模が大手をはじめ相応の企業規模であれば、信用情報は比較的容易に入手できますし、信頼性もあります。

しかし、零細企業や個人事業主の信用情報になると、そもそも情報が非開示となっていたり、開示されている内容も概算数字が多かったりといった理由で、与信判断の根拠とするには悩ましいケースが多いことも事実です。

さらに、中小・零細企業や個人事業主が取引相手の場合は商談の規模も小さくなりがちで、その取引から得られる利益面も限定的になります。

よって、中小・零細企業や個人事業主との取引においては、信用情報取得や分析に関する与信管理コストを大幅に割くことは費用対効果が悪いと言えます。

そのため、中小・零細企業への与信管理は、対応が2つに分かれやすくなります。

一つは、信用情報の取得は企業概要程度にとどめ情報入手コストを圧縮する方法です。
その代わり、入金期日の管理と営業担当者からの情報収集を徹底することで、与信管理を行います。

もう一つは、取引信用保険や債権保証サービスを活用して、中小・零細企業に関する取引はリスクヘッジしてしまう方法です。
情報入手や分析にコストを割いても、一定数の貸倒債権が発生している、もしくは発生する確率が高いと見込まれるなら、コストを確定させた上でリスクヘッジを行うことは業務の効率化にもつながる方法と言えます。

注意点は、取引信用保険や債権保証サービスの購入は貸倒れがおきた際、保険金や保証金により損失が補填される商品・サービスであるため、信用情報と比較するとコストは大幅に上昇します。

しかし、その一方でリスクヘッジ商品の活用は、新規の中小・零細企業への新規与信取引のハードルを大きく下げるため、営業促進効果が期待できます。

よって、現時点での費用対効果だけでなく、ビジネス拡大の可能性も加えて自社にとってどちらが良いかを検討する必要があります。

与信管理の予算 判断基準⑤:マンパワー

与信管理業務に多くの担当者を置き、潤沢にマンパワーを割くことができる企業はそれほど多くありません。

これは、国内倒産件数が低水準で推移していること、与信管理業務の繁忙期がある時期に集中すること、与信管理のITツールが高度化していることが理由として挙げられます。

マンパワーを多く割けられなかったとしても、取引先数が少数であるとか、業界内でも優良大手企業としか取引が無い等の状況であれば、大きな問題は無いでしょう。

しかし、例えば担当者は1名で総務関連を主業務としながら与信管理業務を兼任し、与信取引先も中小・零細企業が中心で数千社あるとすればどうでしょう。

対策として、担当者を増やす、または何らかの与信管理ツールやリスクヘッジ商品を採用するということが挙げられます。

担当者を増やすにしても、与信管理ツールやリスクヘッジ商品を導入するにしてもメリットとデメリットがあります。そのため、どちらが必ず優れているということではありません。

ただし、予算を考える際には担当者を増やした場合の人件費増を基準とするべきです。

見込まれる人件費で利用できる与信管理ツールやリスクヘッジ商品を検討し、自社の状況からどの打ち手が最大に効果を発揮するかを検討しみてください。

おわりに

与信管理は、発生するかどうか解らない貸倒れを防ぐという業務の性質上、その効果が解りづらい業務です。

効果が解らないということは、予算をどのように決めるのかも難しくなります。

しかし、合理的な予算を設定することは与信管理体制構築における重要な要素ですので、必要に応じて見直しを検討してみてください。

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