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【実践編】どの資産が有効?実効的な担保の選び方と実務ポイント(図解&事例入り) 担保に適した資産の条件とは?
担保に適した資産の条件とは?
担保として価値が高い資産は、「価値が高く、換金しやすいこと」がポイントです。
企業の資産は大きく「流動資産」と「固定資産」に分けられますが、それぞれに担保としての優劣があり、活用の際には特有のポイントがあります。
図解1:資産の種類と担保適格性イメージ
企業の資産
├─ 流動資産(すぐに売れるもの)
│ ├─ 預金(特に定期預金) ← 最も換金性が高い
│ ├─ 売掛債権(取引先への未回収金)
│ └─ 在庫(商品や材料)
└─ 固定資産(長期使用資産)
├─ 土地・建物(不動産) ← 安定した価値と換金性
├─ 機械設備(汎用性で評価が分かれる)
└─ 知的財産(ブランド価値など、事業に依存)
流動資産の担保適格性
流動資産は比較的短期間で現金に換えられる性質を持ちますが、日々の営業で増減するため扱いが難しい面があります。
■ 預金 ・特に定期預金は価値の変動がほぼなく、最も信頼性の高い担保です。 ・自行の預金であれば「相殺(預金残高から融資残高を差し引く)」で即座に回収できるため、 金融機関にとって非常に強力な保全手段です。 ■ 売掛債権 ・回収見込みが高く、滞留債権が少なければ換価性が評価されます。 ・ただし顧客の信用状況や回収管理体制も担保の実効性に影響します。 ■ 在庫 ・通常は比較的早期に現金化可能ですが、販売方法や市況により換価額が大きく変動します。 ・担保実行時には在庫の量や質の変動リスクも考慮が必要です。
事例1:流動資産担保の活用例
製造業のA社では、売掛債権を金融機関に譲渡担保として設定。顧客の支払期日と信用管理をしっかり行うことで、銀行からの運転資金借入れがスムーズになり、資金繰りが安定した。
固定資産の担保適格性
固定資産は流動性が低めですが、価値が安定しているため担保適格性は高いとされます。
■ 土地・建物(不動産) ・売買事例が多く市場も安定しているため、担保として非常に有効です。 ・価値の短期変動が少なく、流動性と安定性のバランスが取れています。 ■ 機械設備 ・汎用性の高い機械は市場価値も高く評価されます。 ・ただし特殊で大型の設備は流通市場が限られ、換価性が劣る場合もあります。 ■ 知的財産(ブランド・特許等) ・事業の継続性に依存する側面が強く、単独での担保評価は難しい資産です。 ・しかしブランド価値が高い事業体の場合、企業価値として包括的に担保にする試みもあります (いわゆる「企業価値担保権」)。
事例2:固定資産担保の活用例
建設業のB社は保有する土地と建物を抵当権として設定。これにより大規模な設備投資資金を銀行から調達。土地の価値が安定していたため、銀行も信用リスクが低いと評価した。
倒産時における担保権の効力
・民事再生・破産の場合
担保権は「別除権」として扱われるため、倒産手続に関係なく優先的に回収可能。
・会社更生の場合
担保権の実行は制限されるものの、「更生担保権」として更生計画内で優先弁済を受ける権利がある。
図解2:倒産手続きにおける担保権行使のイメージ
倒産手続き種類 ├─ 破産・民事再生(担保権者は優先して回収可能) └─ 会社更生(担保権行使は制限されるが更生計画で優先弁済)
実務で押さえるべきポイント
• 流動資産担保は管理が難しいため、日々の資産動向を把握し、適切な評価と監査が必要。
• 固定資産担保は評価機関による査定が重要で、市場変動リスクに注意が必要。
• 無形資産を含む企業価値担保の登場で、従来の担保設定が難しい企業にも融資機会が拡大。
まとめ
• 担保選びでは「資産の換金性」と「価値の安定性」が重要条件。
• 流動資産は即時換金力が高いが管理と評価が難しい。
• 固定資産は安定性があり、担保評価もしやすいが換金に時間がかかることも。
• 企業価値担保権など新しい担保制度も注目されている。