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与信管理の知恵袋 Vol.34 支払繰延の要請や手形ジャンプの要請を受けた場合の対応について

債権保全策について議論する与信管理担当者

こんにちは。MCC与信管理ラボ編集部です。

取引先の倒産兆候は、色々な形で経営資源(ヒト・モノ・カネ等)に変化を現します。

支払遅延は、代表的な危険の予兆です。恒常的に支払遅延が続く場合は、その後も支払繰延の要請や手形ジャンプの要請が続くことが想定されます。

支払繰延要請・手形ジャンプ要請を受けた場合、注意しなければならないことは「慌てないこと」「冷静に一つ一つ事実を確認すること」です。

依頼を受けた時こそ、情報を集中的に入手できる一番のチャンスです。

先延ばしにした結果、なにも情報を得られないまま、あっという間に倒産していくケースも少なくありません。

今回は、支払繰延要請・手形ジャンプ要請への対応で、注意すべきポイントを確認していきましょう。

聴取・確認すべきポイント

「資金繰りの実態はどうなのか」「我々が繰延に応じることで、立て直すことができる状況なのか」を見極めることが大切です。

それらを見極めるための、聴取・確認すべきポイントは以下の通りです。

繰延要請金額と期間

・いつまでにいくらを繰延べしたいのか。

資金不足に関して

・不足している資金はいくらか。
・当社への繰延要請金額と一致するか。
・当社のみへの要請か。 / 他社へも要請したか。
・他社への対応方法について など

資金不足の原因及び性質

・一時的なものか / 恒常的なものか

金融機関との交渉経緯と対応状況

これらを項目ごとに確認するためには、月次ベースの「資金繰り表(実績・予想)」を提出させて、実態を見極めていく方法が推奨されます。

「資金繰り表の提出なんてしてくれるのだろうか。」と思われる方もいるかもしれませんが、取引先との交渉の前に、必ず銀行と交渉しているはずです。

その際に使った資金繰り表などの資料をすべて提出させ、詳細を確認していきます。

「そのような資料は作っていない」ということであれば、銀行との交渉も難しく、事態は深刻と判断した方がよいかも知れません。冷静に判断し、対応しましょう。

要請に応諾する場合のポイント

やむを得ず要請に応諾するとしても、次の3つのポイントは押さえていきましょう。

裸債権は増やさない

「裸債権」とは担保のない債権ということです。

取引先の資金繰りが厳しいことが明確になっている状態です。

今回は要請を応諾するにしても、「裸債権は増やさない」ことが重要です。

要請額を100%受けず、一部でも払ってもらうように交渉していきましょう。

応諾する時が、最後の回収のチャンスかもしれません。

また、今後の取引は、「回収の範囲内で続ける(債権は増やさない)」あるいは「担保取付け・保全策を講じて行う(裸債権を増やさない)」ことが原則です。

保全の強化

保全の強化をすること、つまり、防御を固めることもとても重要です。

「防御」とは、「担保」あるいは「保全策」のことです。

「担保」と言っても色々ありますが、BS資産は基本的にすべて「物的担保」として扱われます。

文書化

口頭契約で取引をしている場合も実務では少なくありませんが、後々に問題が起きた時のために、文書で「契約」を残しておくことが大切です。

仮に法廷闘争になった場合には「書いたもの」で残っているかが勝負になります。

裁判では、裁判官が判断しますので、我々の常識という説明は通じません。

何か起きた場合に備えて、平常時に、契約書と共に、貨物受領証、出荷案内書、検収書、請求書、関連e-mailなどの取引文書に至るまで、可能な限りは、文書で残しておくことが大切です。

繰延する場合には、繰延依頼書を作成してもらい、その後の打合せの内容・回答を文書で残しておきましょう。

最終的に繰延に応じる場合にも、「債務承認弁済契約書」「繰延合意書」等、繰延の諸条件について文書で残しておくことが大切です。

実務では難しい場合も多いですが、公証人役場で書類を作れば、「公正証書」になり、その文章の中に「強制執行認諾条項(債務不履行が起きた場合は直ちに強制執行に入る旨を予め合意しておく文章)」を入れておけば、繰延期日に支払わない場合は裁判によって勝訴判決(債務名義)を取らなくても、すぐに「強制執行」が行えます。

状況によっては活用することも念頭に入れましょう。

おわりに

支払繰延の依頼を受けた時点で、取引先の資金繰りが厳しいことが明確です。
今回、お伝えしたポイントを整理し、いざというときの取引先との関わり方、自社への負荷が少しでも軽減されるような対処法を選定し、実施していきましょう。

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