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民法(債権法)改正 < 連載第3回 >「保証に関する改正民法の内容~保証人に対する情報提供義務①~」

民法改正(保証)

2017年5月26日、民法の債権編を中心とする改正法(以下「改正民法」といいます)が成立し、本年4月1日に施行されました。明治29年に民法が成立して以来、実に120年ぶりの大改正となります。

このコラムでは、今回の民法改正の対象となったもののうち、特に与信管理に関連すると思われる点をいくつか取り上げて、解説したいと思います。

保証に関する改正民法の内容として、第一回では「個人根保証契約に関する保護の拡大」について、第二回では「第三者保証の保証意思確認の厳格化」について取り上げました。

今回は「保証人に対する情報提供義務」について、改正の概要、背景、実務上の留意点をご説明します。

※ 前回の記事はこちら:「保証に関する改正民法の内容~第三者保証の保証意思確認の厳格化~」

保証に関する改正民法の内容(前回記事の続き)

3-1.契約締結時における情報提供義務

(1)改正の概要

主たる債務者が、事業のために負担する債務に関する保証ないし根保証を個人の保証人に委託する場合、主たる債務者は、当該個人保証人に対し、以下(※)について説明しなければなりません(改正民法第465条の10第1項、第3項)。

< ※ 契約締結時、主たる債務者が当該個人保証人に対して提供すべき情報 >
①財産及び収支の状況
②主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
③主たる債務の担保として他に提供し又は提供しようとするものがあるときはその旨及びその内容


主たる債務者の義務違反を、債権者が知りまたは知ることができた場合、その効果として、保証人は、保証契約を取り消すことができます(同条第2項)。

(2)改正の背景

保証人が債権者と保証契約を締結する場合、主たる債務者の経済状況その他の情報を知ることは重要です。なぜなら、保証人が負担する責任の重さ(リスクの大きさ)がそれによって影響を受ける可能性があるからです。

そこで、事業上の主債務について保証又は根保証契約を締結する場合、収支の状況等、主債務者に関する一定の情報を、主たる債務者の委託を受けて保証人となろうとする者に対し開示する義務が定められました。

(3)実務上の留意点

本条の定める情報提供義務の主体は、債権者ではなく、主たる債務者ですが、主債務者が義務に違反し、債権者がそれを知り得た場合、保証人による契約の取消という不利益は債権者が被ることになる点に留意が必要です。

そこで、債権者としては、保証契約締結時に、主たる債務者が、保証人に対して、きちんと情報提供義務を果たしたかという点を確認しておく必要があります

具体的には、法が情報提供を求めている上記①~③の各項目(なお、①の「財産及び収支の状況」に関しては、決算書[決算後に状況の変化が生じた場合はプラスその内容]に基づいて保証人に説明を行うことが考えられます)を記載するとともに、主たる債務者は、保証人に対し、これらの項目について正確に説明した旨を、また保証人は主債務者から上記の項目について正確な説明を受けた旨を記載し、主債務者、保証人両名が署名捺印した書面を取り付けておくことが、実務上の運用として考えられます。
そのような書面のフォームを、予め作成し準備しておくとよいと思います。

但し、会社の主債務を現社長が保証するという場合は、現社長は会社の情報を承知していることが通常であるため、情報提供義務履行の確認手続をより簡略化することも可能であり、簡略化した場合でも、保証契約が取消される可能性は低いと考えられます。

なお、この契約締結時における情報提供義務は、契約更新の都度必要と解されておりますので、この点にもご留意下さい。

コラム筆者プロフィール

東京霞ヶ関法律事務所 弁護士 青木 智子 氏

早稲田大学法学部卒業、1997年弁護士登録(修習49期)。
清塚・遠藤法律事務所(現東京霞ヶ関法律事務所)入所。
主な取扱分野は、企業法務全般、債権保全・回収、倒産処理、労働事件、商事・民事事件等。
第二東京弁護士会「子どもの権利に関する委員会」に所属し、いじめ、体罰、虐待など現代の子どもの人権に関する事件対応に関与。

※次回「保証に関する改正民法の内容~保証人に対する情報提供義務②~」につづく

民法(債権法)改正に関する記事

< 保証 >
個人根保証契約に関する保護の拡大
第三者保証の保証意思確認の厳格化
保証人に対する情報提供義務① ※本記事
保証人に対する情報提供義務②

< 債権譲渡 >
譲渡禁止特約の効力の変更
将来債権譲渡の明文化 他

< 相殺 >
差押と相殺
債権譲渡と相殺

< 定型約款 >
組入要件等について

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