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民法(債権法)改正 < 連載第8回 >「相殺に関する改正民法の内容~債権譲渡と相殺~」

民法改正(保証)

前回の記事では、相殺に関する改正民法の内容として、「差押と相殺に関する改正」について取り上げました。
今回は、「債権譲渡と相殺に関する改正」「相殺に関するその他の改正」について、改正の概要、背景、実務上の留意点をご説明します。

相殺に関する民法改正の概要について(前回記事の続き)

2.債権譲渡と相殺に関する改正(ポイント2)について

(1)改正前の状況について

改正前の民法468条2項では、債権譲渡がなされた場合の譲渡債権者の債務者は、譲渡通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって、譲渡債権の譲受人に対抗できるとしており、上記事由には相殺が含まれるとされていました。しかし、どのような場合に相殺を対抗できるのかという要件(条件)が明確ではありませんでした。

(2)改正の内容

改正法は相殺を対抗できるための要件として、原則として、「反対債権と譲渡債権の弁済期の先後を問わず、譲渡債権の債務者は、譲渡人に対する反対債権を譲渡の債務者対抗要件具備時より前に取得した場合、これを自働債権として、譲渡債権を受働債権とする相殺をもって対抗できる」と規定しました(改正法469条1項)。

また、改正法は、譲渡人に対する反対債権を譲渡の債務者対抗要件具備時より後に取得した場合であっても、①当該反対債権が債務者対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権であるとき、または②譲渡債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権であるときのいずれかの場合には相殺を認めるとして、相殺ができる範囲を拡張しています(改正法469条2項本文)。

ただし、前回の記事で解説した「差押と相殺」の場合と同様に、債務者対抗要件具備後に他人の債権を取得して行う相殺は認められません(改正法469条2項但書)。

「前の原因に基づいて生じた」場合とは、前回記事で触れたとおり、「差押前に主債務者の委託に基づいて保証をしていた場合において差押より後に発生した事後求償権」などが考えられます。

また、「譲渡債権の発生原因である契約に基づいて生じた」場合とは、たとえば、「将来発生する売買代金債権が債権譲渡されていたところ、債務者対抗要件具備後に売買契約が締結され、目的物の引渡を受けたが、その商品に瑕疵があったという場合の契約不適合責任に基づく損害賠償請求」などが考えられます。

3.その他の改正

(1)相殺禁止等

改正前民法505条2項では、相殺禁止特約により原則は相殺が禁止され、善意の第三者にはその特約が対抗できないと規定されていました。一方、改正法505条2項では、「相殺禁止・相殺制限特約は、第三者が知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限って、その第三者に対抗できる」とされました。

(2)相殺の充当

改正前民法512条は弁済充当の規定を単に準用していましたが、改正法512条、512条の2は、相殺の充当について、「単に準用するだけではなく、特段の合意がない限り、相殺適状の順序に従って相殺により消滅する」等の規定を設けました。そのため、同条項に定める相殺充当の順序を変更したい場合は、予め相殺充当の合意を契約書等で定めておく必要があります

(3)不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止

改正前民法509条では、受働債権が不法行為によって生じた場合、一律にその受働債権を用いた相殺を禁止していました。改正法では、改正前よりも相殺禁止の受働債権の範囲を限定しています(改正民法509条)。

コラム筆者プロフィール

東京霞ヶ関法律事務所 弁護士 梅林 和馬 氏

早稲田大学法学部卒業、2000年弁護士登録(修習53期)
清塚・遠藤法律事務所(現東京霞ヶ関法律事務所)入所
主な取扱分野は、企業法務、債権保全・回収、倒産処理、労働事件、商事・民事事件等
第二東京弁護士会「非弁護士取締委員会」副委員長として非弁活動の取締に関与。

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個人根保証契約に関する保護の拡大
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< 債権譲渡 >
譲渡禁止特約の効力の変更
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< 相殺 >
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債権譲渡と相殺 ※本記事

< 定型約款 >
組入要件等について
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