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民法(債権法)改正 < 連載第5回 >「債権譲渡に関する改正民法の内容~譲渡禁止特約の効力の変更~」

民法改正(保証)

それでは今回からは、民法改正に伴い変更のあった「債権譲渡」の内容について2回に分けて解説していきましょう。その後には、これまた債権回収に重要な「相殺」についても解説していきますので宜しくお願い致します。

債権譲渡に関する民法改正の概要について

早速ですが2020年4月1日より施行された改正民法(以下「改正法」といいます。)において、債権譲渡は、主に以下の4つの改正がなされています。

<債権譲渡に関する主な改正内容>
1.譲渡禁止特約(正確には、改正後は譲渡制限特約と呼ばれます。)違反の債権譲渡の効力が改正前の解釈より変更された
2.将来債権譲渡が明文で認められた
3.異議をとどめない承諾という制度が廃止された
4.債権譲渡と相殺の関係について明文で規定された


4については、「相殺」に関する記事で説明する予定ですので、以下では、上記1~3について順に説明していきます。

1.譲渡禁止特約の効力の変更について

改正前と後に分けて理解していきましょう。

(1)改正法前の譲渡禁止特約の効力の解釈等について

改正法前の民法466条2項に基づき、改正前は、債権者と債務者の合意によって、債権譲渡を禁止することができ、その債権譲渡禁止の特約(以下「譲渡禁止特約」といいます。)に違反した場合、債権譲渡自体が無効。ただし、債権の譲受人が譲渡禁止特約の存在を知っていた場合及び重大な過失で知らなかった場合は、債権譲渡の効力を対抗できると解釈されていました(最判昭和48年7月19日)。

(2)改正内容について

譲渡禁止特約設定の趣旨は、一般的に、①譲渡に伴う事務の煩雑化を避けるため、②譲渡に伴う過誤払いの危険を避けるため、③債務者の債権者兼譲渡人に対する相殺の利益の確保のためと言われていました。

しかしながら、中小企業等において「自己の有する価値のある債権を譲渡し、資金調達に活用したい」とのニーズが相応にあったため、このニーズを勘案して検討したところ、「上記①~③の譲渡禁止特約設定の趣旨からすれば、債権譲渡自体を無効とまでしなくとも、その趣旨は達成可能ではないか」ということになりました。

結果として、譲渡禁止特約に違反する債権譲渡を無効とするのではなく、債権譲渡自体は有効(改正法466条2項)とした上で、債務者は、譲渡禁止特約を対抗できる譲受人からの支払請求を拒絶でき、改正前の債権者に弁済し、あるいは相殺した場合、支払等により債権が消滅したことを譲受人に対抗できる(改正法466条3項)という内容に改正されました。

なお、預貯金債権については、譲渡禁止特約が付されることはいわば常識であるとして、上記(1)の改正前の取り扱いが維持されました(改正法466条の5)。

すなわち、改正後は、譲渡禁止特約がある場合、改正前と同じく譲渡禁止特約の存在を知らず、かつ知らないことに重大な過失がない譲受人には対抗できず、原則として債務者は譲受人からの支払請求を拒絶できませんが、譲受人が譲渡禁止特約の存在を知っている、または重大な過失で知らなかったときは、「債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって」譲受人に対抗できると改正されました(改正法466条3項)。つまり、債務者は、譲渡人からの支払請求を拒んで従来の債権者に弁済等することで、譲受人に譲渡された債権を消滅させることができることになりました。

また、改正前は、譲渡禁止特約の付された債権の債務者は、債権者が誰か分からないということを理由に供託していましたが(改正前民法494条、改正法494条2項)、譲渡禁止特約違反の譲渡も有効とされたため、改正法494条2項に基づく供託はできなくなり、債務者は譲受人が譲渡禁止特約の知、不知にかかわらず、新たに改正法466条の2を根拠に供託できるようになりました。この供託金は譲受人のみが還付請求できますので(改正法466条の2第3項)、譲受人への弁済に難色を示す債務者に対し、この供託をするように誘導して、譲受人が債権回収を図るという活用が考えられます。

更には譲渡人について破産手続開始決定があった場合は、譲受人は譲渡禁止特約について悪意、重過失であっても債務者に対して供託させることができるようになりました(改正法466条の3)。この供託がなされた場合、譲受人のみが還付請求でき(改正法466条の3、466条の2第3項)、譲受人が債権回収を図ることができます。

コラム筆者プロフィール

東京霞ヶ関法律事務所 弁護士 梅林 和馬 氏

早稲田大学法学部卒業、2000年弁護士登録(修習53期)
清塚・遠藤法律事務所(現東京霞ヶ関法律事務所)入所
主な取扱分野は、企業法務、債権保全・回収、倒産処理、労働事件、商事・民事事件等
第二東京弁護士会「非弁護士取締委員会」副委員長として非弁活動の取締に関与。

※次回「債権譲渡に関する改正民法の内容~将来債権譲渡の明文化 他~」につづく

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